成熟社会 都市ストックの再編
12月 31st, 2011

都市遺産班 藤沢防災建築街区パンフレット作成

都市遺産班パンフレット

研究会の3年生4人(石川亮平、河本雄介、河野和彦、宮下貴裕)は先学期から共同で藤沢駅南口の、はぜのき広場を中心に名店ビル、ダイヤモンドビル、C-Dビルの3つのビルからなる通称「391街区」の研究を進めていますが、先のORFに合わせて、簡単なパンフレットを作成しました。
彼らの研究の基本コンセプトは「都市計画遺産」ないし「都市遺産」。非戦災都市である藤沢では、昭和30年代後半から昭和40年代前半にかけて、全国に先駆けて、都市改造事業として、駅前広場の創出を大きな目的とした駅南口一帯の土地区画整理事業が実施されますが、その際、防災建築街区が合わせて指定され、その一部である391街区では、その基本計画で採用された中庭型街区という意欲的な空間像がそのまま実現しています。ビル、街区の空間構成の特徴とともに、その都市的な意味を都市計画史や現代都市史の視点から解き明かし、今後の継承や再生に向けた提案をしていきたいと考えています。

藤沢防災建築街区基本計画(1962)/藤沢市役所所蔵・中島撮影

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12月 24th, 2011

島原プロジェクトの中間報告書作成

長崎県と慶應義塾大学が進めている「地域の強みを活かした地域力向上支援事業」の一環として、今年度、中島研のメンバー7名(院生1名、学部3年生6名)と玉村研のメンバー2名、駒井研のメンバー1名の合計10名のチームで、長崎県島原市の調査、提案に取り組んでいます。島原の強みをどのようにして顕在化させるのか、実現可能な取り組みとして提案することが目的で、これまでに現地に3回調査に入り、さまざまな資源の見学に加えて、多くの人にインタビューをしたり、アンケート調査を行ったりしてきました。そして、先週の12月19日には、これまでの調査のいったんのまとめとして、中間報告書を提出しました。これから、島原市、長崎県の方々と提案内容について協議を進めて、2月の最終報告までにブラッシュアップする予定です。今のところ、学生たちは、「食」、「湧水」、「航路」、「若者(高校生)」の4つの切り口を設定し、サービス開発やプロダクト開発、組織づくりといったソフトな観点からの提案を行っています。島原の人の共感を呼び、実際に動き出すような提案へ練り上げていきたいと思います。

調査の一環として、「雲仙プラン100プロジェクトのコンテストにも参加しました。

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12月 19th, 2011

【書評】西村幸夫編『路地からのまちづくり』

本書では、20世紀における都市計画の中で「自動車交通にまったく対処できない、防災上の問題を孕んだ空間」として位置付けられてきた路地に着目をし、今後の都市計画の中で路地を生かすための視点や、路地が持つ問題点をいかに解決するかについて、事例を含む形で紹介されている。

路地にはいくつかの魅力がある。それは訪れた人に安らぎや懐かしさを与えるといった点でもそうだし、都市空間におけるコミュニティ形成の場としての役割を見てもそうだ。

路地にあふれる生活のにおい、複数の生活が重なるコミュニティの営み、すべての路地に共通する身体感覚・・・それらは来訪者に対して共感をもたらしてくれる。

路地は、地域を分断する都市計画道路とは異なり、同じ場所に住む仲間を形成することが出来る。そこから地域の防災性も向上し、まちはより豊かになることが出来る。

交通手段としての車に着目し、画一的な手法で機能的な計画を進めていった20世紀。それらは都市を発達させるうえで大きな役割を果たしたが、同時に均質的な空間を多数生み出すことともなった。

本当のまちの魅力はそのまちが独自に抱えているものであり、決して数字だけでコントロールできるものではない。路地を見直してまちを見つめなおすことは、従来のトップダウン式な都市計画から離れ、ボトムアップのまちづくりを行うことであるともいえる。ヒューマンスケールのまちづくり、コミュニティ創出を目指した空間を作ろうと思った時には、画一的な基準をそのまま採用するのではなく、そのまちに潜む細やかなものにも目を配り、個性を浮かび上がらせる必要があるのではないだろうか。

そのヒントの一つとして、路地に対する視点があるのではないかと私は思う。都市にとって、路地とは必要なものである。その意義を再認識して見直していくことができれば、21世紀の都市はより魅力的で、人間的な空間へと生まれ変わることが出来るのであろう。

西村幸夫編『路地からのまちづくり』、学芸出版社、2006年
文責:海野沙弥佳(環境情報学部3年)

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12月 19th, 2011

【書評】鳴海邦碩『都市の自由空間 -街路から広がるまちづくり-』

 本書は、都市空間における「自由空間」を、単に空間を設計するという姿勢だけではなく、社会的文化的な現象として組み立てる観点から魅力的な自由空間を作り出すことを目的としている。そのために古代から現代まで、工学から歴史学、人類学を駆使し、都市再生の原点となる自由空間の意味と歴史を描き出したものである。

 本書ではまず、自由空間の原点となる道や道的空間についてアンデスの幹線道路・ニュータウンの道・江戸時代など複数の異なった時代・場所の例を提示し、それぞれの道の歴史や使用例について解説、その後平安京や江戸の街路の特徴について解説している。

 その次に原始時代の集落から空地について分析、古代から空地は人々の生活にとって必然的な空間だったと述べている。

 その後都市の成立過程について解説した後、現代都市における自由空間について解説している。現代の都市においては、自由空間が以前と比較して多様なものとなった。たとえば、地下街はもちろんのこと、駅やビルのロビー、大規模なショッピングセンターなどの新しい形の自由空間も増加した。

 その一方で自動車交通の急速な発達と共に、重要な共有的な自由空間であった街路が自動車によって阻害されていることを問題視している。

 そして様々な現代における自由空間の例を列挙した後、都市の自由空間はそこを利用するその地域の人がまずその空間の価値を発見することが不可欠である、と締めくくられている。

 本書は自由空間についてその原点の歴史・各国の事例から振り返ることのできる包括的な解説本である。特に、近年増加している新しい形の自由空間についての解説は大変共感できた。実際にターミナル駅の駅ビルなどは人々の憩いの場となっている。そこがまさに自由空間なのだと気づくきっかけを与えてくれた。都市のまちづくりを調べている課程で自由空間は必要不可欠な存在であるので、広く勧めることのできる本だと思う。

鳴海邦碩『都市の自由空間 -街路から広がるまちづくり-』学芸出版社、2009年
文責:浅香健太(環境情報学部 2年)

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12月 19th, 2011

【書評】茶谷幸治『まち歩きが観光を変える ‐長崎さるく博プロデューサーノート‐』

本書は、地方大規模イベントとしては異例の、まち歩きをメインに位置づけたオープンエリア型の形式ながら、結果として観光入込客数前年度比+約7%を記録し大成功に終わった「長崎さるく博’06」の企画・運営の過程を総合プロデューサーとして携わった著者の視点で記されたものである。地方イベントに際し、市民ガイドや市民プロデューサーという形で、市民の力がイベントの担い手として最大限に活かされたという意味で異例であり、注目を浴びた「長崎さるく博‘06」において、前例がないという点から多くの障壁が立ち塞がり、多くの人々からイベントの失敗を指摘されながらも、頑なに市民主体を目指した著者を始めとした企画側の人々の苦労は想像を絶する。そういった著者たちが向き合った多くの障壁、またその障壁への対処方なども隠すことなく述べられている点がまた現実的で面白い。

本書を通じて、観光とは何かと考えさせられる。その地域の魅力を余すことなく打ち出し、それを域外の人々に享受し、楽しんでもらうのが観光であり、観光地のあるべき姿なのではないか。至極シンプルではあるが、これが本質であって、これ以上を求めると観光地はその地域らしさを失ってしまうはずである。

著者はこれからの観光地の在り方を以下のような主旨で語っている。―そのまちの歴史や伝統を活かした地域らしさがそこにはあり、地域住民たちがそれらを支える大きな役割を担っている。観光を通して住民が「わがまちらしさ」に目を向け、育み、「わがまち」に愛着や誇りを持つようになることで観光客を受け入れる大きな基盤となる。それが魅力的で持続的な観光地への近道なのではないか。そして、それは魅力的なまちへの近道でもある。―「観光」と「まちづくり」は表裏一体なのである。

茶谷幸治『まち歩きが観光を変える 長崎さるく博プロデューサーノート』、学芸出版社、2008年
文責:赤松智志(総合政策学部3年)

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12月 19th, 2011

【書評】レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』

 ニューヨークのマンハッタンが形成された過程と当時の様々な計画が紹介され、ニューヨークという都市が持つ過密な文化やそれを支える大衆の欲望などが描かれている。

 ニューヨークの開発は1811年にシオメン・デウィット、グーヴァナー・モリス、ジョン・ラザフォードの3人がマンハッタンを13×156のブロック分割する計画を提案したところから始まった。都市を一からつくる際には無機質なブロックに分割し、1ブロックを最大単位としてそれぞれが独自に開発し競争力を高めることが必要であると考え方であった。しかしそれに対して著者は「都市はもはや相補的な都市的断片の寄せ集めではなくなり、各ブロックは基本的に自らを頼りとして、島のように孤立して存在することになる」と当時の理念を批評している。

 この本では様々な建築家のエピソードが紹介されている。レイモンド・フッド(1871-1934)は過密化が問題となっているマンハッタンについて次のような意見を述べた。

「未来のマンハッタンはタワー都市になる。個々の敷地を気まぐれに乱暴に上方拡大する代わりに、複数のブロックから土地を動員してより大きな敷地の上にビルを建設することになるだろう。こうして複数のブロック上に建つ複数のタワーの周囲に生まれるスペースは建てられない部分として残され、これによってタワーはそれ自身の完全性を手に入れるとともに他から独立することができる。」

フッドは1ブロックが開発の最大単位となっている状態から複数のブロックが統合されてタワー化が進み、タワー以外の場所はオープンスペースになりグリッドの形が崩れていくと予想した。そして実際にロックフェラ・センターなどにおいてこのような考え方が実現し、グリッドに対する意識が変化したと著者は述べている。

 当時の建築家や市民がニューヨークという都市を通してどのような夢を抱いていたのかということが貴重図版やイラストと合わせて描かれておりとても興味深かった。

レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』、筑摩書房、1995年
文責:宮下貴裕(総合政策学部3年)

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12月 19th, 2011

【書評】宇杉和夫他編著『まち路地再生のデザイン〜路地に学ぶ生活空間の再生術』

 戦後復興、高度経済成長、道路や高速道路を中心とする都市施設が短時間でつくられ、生活空間の大改造が進められてきた。そして現在、こうした20世型のあり方から21世紀型の持続的な都市やまちへの転換が問われている。この本では、このテーマに即して路地に焦点を当てている。路地は失われた郷愁だけではなく、情報交換の場、安全な遊び場、人と地域の関わり合いが深く刻まれているものだ。今まで200年かけて継続してきた路地を残す方が、「ハコモノ」をつくることを目指すより地域の空間文化の持続可能性があると本書では述べられている。本書の構成は三章から成り立つ。一章まち路地再生のデザインの思想と方法、二章討論〜路地的空間をまちへどう展開するか、三章まち路地再生の実例である。路地をどのように都市、まちに活かしていけば良いのか、あるいは活かされているのかを本書では記述されている。

 様々な路地が紹介されている中で感じたことは魅力を感じる路地には歴史があるということだ。例えば神楽坂などの路地がそうである。そこには江戸時代から続く空間システムがまだ残っている。また本書ではヒューマンスケールという路地の特徴を活かした住宅の実例なども紹介されている。ただ同じ路地的空間を有しているとしても、やはり歴史のある路地とは別物のように思える。ここで疑問が生じる。歴史を感じるとは一体何であろうか。子どもの頃からその地域やそこに似た場所で暮らしていたというのであれば、懐かしさを感じそれを良しとすることには納得がいく。しかし初めてその地域に行く人達はどのようにして歴史を感じるのであろうか。路地の統一感、石畳、塀、それらだけが歴史を感じるものであれば、それに着目し新しく造れば済むことだ。実際はそうではないだろう。本書の趣旨とは多少ずれている気もするが、本書をきっかけにこうした疑問が生まれた。

宇杉和夫+井関和朗+岡本哲志編著『まち路地再生のデザイン〜路地に学ぶ生活空間の再生術』、彰国社、2010年

文責:河野和彦(環境情報学部3年)

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12月 19th, 2011

『建築雑誌』に掲載 研究会で読んだ本の抄録

中島研究会では、昨年、ニューアーバニズムの入門書として、『New Urbanism Best Practice Guide』という本を輪読しました。その成果は、日本建築学会の学会誌『建築雑誌』2010年11月号に掲載された文献抄録にまとめました。また、先学期、研究会の学部2年生、渡邊美香さんが取り組んだ『Ecological Urbanism』については、同じく『建築雑誌』の2011年12月号に文献抄録というかたちで掲載されました。英語を読むだけで何か疲れてしまった感もなきにしもあらずですが、ともにオムニバス的、俯瞰的な書物で勉強になりました。前者はCiNii経由ですでに公開されております。後者も1年経過すれば見られるようになるようです。
さて、この研究室のブログに、これから研究会メンバー(主に学部の2~4年生)たちによる、都市計画関係の本の簡単な書評を載せていくことにします。研究会ではフィールドワークなくして都市計画やまちの研究なし、といつも言っているのですが、一方で、常日頃から書物には親しむように、とも。

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